古文スキルアップ 枕詞と序詞 ~ナニがちがうの?~

 中古から中世の古文作品には和歌がよく出ます。和歌は三十一音という極めて短い形の中で自分の心情を心情を読まねばならないため、さまざまなルール(表現技法)があります。この表現技法をしっかりと理解することが、和歌を理解するための第一歩です♪
本日は、「枕詞」と「序詞」について説明をしましょう!

枕詞(まくらことば)
1 慣用的な表現で定型化されている
暗記してしまえばよい
2 それ自体に意味はなく、ある特定の語を導く
意味がないので、枕詞の部分は解釈はしなくてもよい
3 大部分は五音で、初句か三句に用いられる
枕詞ベスト25
かねさす・・・日、紫、照るなど
あきつしま・・・大和
あしひきの・・・山、峰、岩など
あづさゆみ・・・いる(射る・入る)、はる(張る・春)など
あまざかる・・・鄙(ひな)
あらたまの・・・年、月、日、春など
あをによし・・・奈良
いそのかみ・・・ふる(古る、降る、振るなど)
いはばしる・・・垂水、滝、近江など
うつせみの・・・世、人、命など
からころも・・・着る、袖、、裁つなど
くさまくら・・・旅、結ぶなど
しきしまの・・・大和、日本
しろたへの・・・衣、袖、袂など
たかてらす・・・日
たまきはる・・・命、世など
たまのをの・・・長き、短き、乱る、絶えなど
たらちねの・・・母、親
ちはやぶる・・・①神、社
ぬばたまの・・・黒、夜、月、夢など
ひさかたの・・・天、月、雲、光など
ふゆごもり・・・はる(張る・春)
ほのぼのと・・・明かし、明石
もののふの・・・八十(やそ)、矢など
ももしきの・・・大宮

序詞(じょことば)
1 作者の創作による和歌としての修辞法
自分でどこが序詞を判断する必要がある
2 和歌の本来の歌意とは異なる、別の意味を持つ
和歌の本来の歌意とは直接関係はないが、解釈する
3 ある特定の語を導く
以下の3つのパターンで特定の語を導く
A 比喩や掛詞 で導くパターン (~のように)
あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
▽本来の歌意は「長い夜を一人で寝るのだなぁ」
▽山鳥の尾は「長い」 ⇔ 夜が「長い」 意味の類似性
◆「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の」→「長々し」
B 同音・類音 で導くパターン (~ではないが)
みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ
▽本来の歌意は「いつ見てからかあなたが恋しい」
▽「いづみ」川 ⇔ 「いつ見」き  音の類似性
◆「みかの原わきて流るるいづみ川」→「いつ見」

 まぁ、歴史的な背景とか、本質的なことはヌキにして、大ざっぱにいえば、「決まった五文字で暗記すればOK」なのが「枕詞」で、「六文字以上で自分で見極める」のが「序詞」ですね。

それでは最後に練習問題です。
以下の和歌からそれぞれ、「枕詞」あるいは「序詞」を、「それが導く特定の語」と共に抜き出してみて下さい!

1 瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ

2 立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む

3 住之江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ

4 あらたまの年の三年を待ちわびてただ今宵こそ新枕すれ

5 陸奥の信夫もぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに

1 「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」 → 「われ」

2 「立ち別れいなばの山の峰に生ふる」 → 「まつ」

3 「住之江の岸による波」 → 「よる」

4 「あらたまの」 → 「年」

5 「陸奥の信夫もぢずり」 → 「乱れ」