サルでもわかる量子論 第4回 ~アインシュタイン登場~

第4回 アインシュタイン登場 ~月水金は波、火木土は粒子~
18世紀後半から19世紀にかけて、物理学者を悩ませる別の問題があった。「光電効果」と呼ばれるもので、ある種の金属に光を当てると、電子が飛び出すという現象である。もちろん、電子が金属から飛び出すにはエネルギーが必要なので、この現象は金属中の電子が光からエネルギーをもらって飛び出すということである。
さて、この「光電効果」を実験していると、振動数の大きな光(光の中で振動数が大きいのは青い光である)を当てると、それがどんなに弱い光であろうが短時間であろうが、金属から電子が簡単に飛び出す。ところが、逆に振動数の小さな光(たとえば赤い光)はどんなに明るくしてもいくら長時間当てても、電子はまったく飛び出してこないのだ。何やらおかしい。
この当時、光は波と考えられていた。その考えの中では、「光のエネルギー」=「光の強さ・量」なのである。たとえば「明るい」「長時間の光」は光のエネルギーが多いと言える。だとすれば、振動数の小さな光を明るくして長時間当てれば、エネルギー的には十分な量を与えることができ、電子が飛び出すはずではないか。それでも電子は、飛び出さない。
さて、困った・・・ そこに登場したのが、かの有名なアインシュタインである。彼はそこでこう考えた。「じゃぁ、光を粒子と考えてみたらどうかな?」(これはなかなかビックリの発想だ。なぜなら100年前にヤングによって「光は波動である」と確認されたばかりなのだから)。
ところが「光は粒子である」と考えると、実に当たり前に説明がつく。(ちなみに光の粒子を光子と呼ぶ。)つまり、振動数が大きい光の光子は大きなエネルギーを持ち、振動数が小さい光の光子は小さいエネルギーを持ち、その光子の持つエネルギーは振動数に比例する。これを突き詰めてこのような公式になった。
E=h \nu    E:エネルギー、 h:プランク定数、 \nu:光の振動数(ニュー)
あれ? そうそう、これは以前扱った、プランクの公式である。すなわち、ここでプランクの公式が証明されたわけだ。
さらに金属の材質によって、電子が飛び出るための最低必要なエネルギー (仕事関数)が決まっているのだ。だから、光子が持つエネルギー の一部が仕事関数 となり電子を飛び出させ、残ったエネルギーが運動エネルギー となって、飛び出す電子の速さになるのである。これが「光量子仮説」である。

光量子仮説  E=W+\frac{1}{2}mv^2_{max}
ちなみに、アインシュタインがもらったノーベル賞はこの「光量子仮説」に対してであり、かの有名な「相対性理論」で受賞したわけではない。発表時期はほぼ同時であったのに、「光量子仮説」でノーベル賞を受賞したのは、一説によると「相対性理論」があまりにも難解過ぎて本当に相対性理論が成立するのか判断が難しかったからだとか。まぁ確かに、時間や長さが変化するって言われても、わかんないよね・・・
さてさて、ここで、奇妙な事態が起きることとなった。すなわち、「光は波動であるとともに粒子である」ということだ。古典物理学の「常識② 光は電磁波、すなわち波動の一種である。波動は物質そのものが運動するのでなく、物質が伝えるものである。」と矛盾するではないか! これは困った。「光は波動であるとともに粒子である」だって? いったい全体光とは何なのだ? 当時の物理界において「波は、月・水・金曜日は『波』、火・木・土曜日は『粒子』、日曜日は、神に教えを請う」、という本当とも冗談ともつかない話が、物理学者たちの間でささやかれたという。物理学者の混乱ぶりが伺える話である。しかし、どんなに矛盾しているように思われようと、実験結果に従うしかないのだ。