物体にかかる力と速度の関係(中学生版)① ~時習館の極上の理科~
なめらかな水平面上に 1kg の物体Aがある。この物体に水平方向から 10N の力を与え続ける。物体はどのような運動をしますか? 空気抵抗や摩擦力はないものとする。
① ある一定の速さで動き続ける ② 一定の割合で速度を増しながら動き続ける
●現実世界とは条件が異なる!
まず、僕たちが住む現実の世界を考えてみよう。現実世界では、摩擦力や空気抵抗が必ず存在する。だから、今動いている物体をそのままにして、外から力を加えない場合、摩擦力や空気抵抗でその物体は必ず止まってしまうよね?(落下運動や斜面を滑り落ちる運動には「重力」という力が働いているから、動き続けるけどね)だから、僕たちは物体を止まることなく動かし続けるために力を加える必要がある。例えば、校庭にでっかい箱があって、それを校舎の方まで押して運ぶように先生に言われたとする。君たちは箱を押して動かし始める。ところが、校庭と箱の間には大きな摩擦力が働いているから、押すのをやめてしまうと、箱はすぐに止まってしまうよね? そこで君たちは力を加え押し続けて箱を動かさなければならないんだ。
このような「現実世界の条件」で考えると、1kg の物体に 10N の力を与え続ければ、その物体は「ある一定の速さで動き続ける」と感じるだろう。でもそれは、現実世界には摩擦力や空気抵抗が存在するからなんだ。
でも、問題文をよく読んでみよう、この問題の条件では、「なめらかな水平面」で、「空気抵抗や摩擦力はないものとする」という条件が与えられているよね? そう、現実世界の条件とは異なるんだ!
●与えられた条件に注意しよう!
このような問題を考える時「与えられた条件を読み取る」というのは基本だ。今回は「空気抵抗や摩擦力はないものとする」という部分に注目しよう!
ところで、空気抵抗や摩擦力がない世界ってどんな世界だろう? わかりやすい例で言えば、氷の上なんていいかもしれない。氷は非常に摩擦係数が小さいから摩擦力が少ない。スケートをしているときを想像してみよう。目の前のA君を押すと、A君は押されて氷の上を滑りだす。そして、そのままスーっと止まることなく一定の速さで動き続けると想像できる。そりゃ、多少ながらも摩擦力うや空気抵抗があるので、いつかは止まるけど、でもしばらくはそのままスーっと一定の速さで動き続けるよね?
あるいは、もっと正確な例を考えるなら、宇宙空間を考えてみよう。宇宙には気体はないので、空気抵抗はない。重力もないので、ふわふわ浮きあがり摩擦力もない。そんな空間で、もし君が、。目の前のA君を押したら、A君は押されて宇宙空間を動き出すのだけれど、空気抵抗も摩擦力もない宇宙空間だ。A君は永遠に止まることなく宇宙空間を彷徨い続けることになるんだ!
つまり、「空気抵抗や摩擦力はないものとする」という条件を正しく読み取って、こういうスケートや宇宙空間のようなイメージで考えなければならないんだ。
●外からの力がかからない場合は、等速直線運動(あるいは静止状態)だ!
そこで、もう一度スケートや宇宙空間のイメージを思い浮かべながら、想像上の物体Aを押してみよう。物体Aは最初は静止している。そこで、ちょっとだけ力を加える。すると、物体は動き始める。さぁ、ここからだ。いったん動き始めた物体Aは、そのまま一定の速さで動き続けるよね? 外から力を加えなくても、等しい速度で運動をするんだ。
ここから「外からの力がかからない場合は等速直線運動をする」と言えるのだ。これはものすごく大事だ。さっきも言ったように、現実世界の条件ではこのようなことは起こらないので、勘違いしやすいからね。
もちろん、静止状態のままで、外から力を加えない場合は、そのまま物体は静止続けるから、もともと静止状態の物体においては「外からの力がかからない場合は静止状態のままである」とも言えるね。
●外から力をかけ続けると、一定の割合で速度を増しながら動き続ける!
では、もう一度スケートや宇宙空間のイメージを思い浮かべながら、想像上の物体Aを押してみよう。すると物体Aは動き始めた。ここで、力をかけるのをやめずに、力をかけ続けるんだ。動き始めた物体Aは、さらに力を受けてもう少し速くなる。そしてまた力を受け、物体Aは、さらに速くなる。こうして、物体の力はだんだん速くなる。
ここから「外から力をかけ続けた場合は、一定の割合で速度を増しながら動き続ける」と言えるのだ。これもものすごく大事だ。覚えておこう!
●答えは・・・
もうわかるよね? そう、答えは②だ!
では、次回は、もう少し、この「一定の割合で速度を増す」という部分と、「力」に焦点を当てて、わかりやすく説明しよう!